【第5話】 “ウチの社員には危機感がないと!”と感じる社長へ
- 竹田 富男
- 2018年2月27日
- 読了時間: 11分
更新日:2月1日
社長の収益向上戦略「リーダーズ通信」より
【第5話】 “ウチの社員には危機感がないと!”と感じる社長へ
1.どうすれば社員は自ら考え、動いてくれるのか?
かつては、社員は与えられた仕事をただ確実にこなしていればよかった時代も有りました。しかし、今は違います。現在のように環境変化が激しい時代においては、社長がいちいち指示を出さなければ社員が動かないようでは、変化に対応していく事が出来ません。
では、どうしたら社員が自ら考え、動いてくれるようになるのでしょうか? そのためには、まず、社員と社長自身との立場の違いを再認識する事です。
社長であれば、自らリスクを背負い、志を持って会社を立ち上げたのですから、どうやって会社の舵取りをして行くべきか人一倍考え抜き行動します。また、様々なセミナーや交流会に参加して、人脈作りや新しい知識や発想を得て、それを事業に取り入れようとします。
しかし、一方の社員はと言えば、たいして頑張らなくても、毎月生活出来るだけの給料を貰うことができます。最低限、目の前の仕事を無難にこなしていれば、生活が保障されているのです(それを支えているのは社長なのですが・・・)。そんな社員に対して、いきなり社長と同じように考え、行動することを期待するのは、ちょっと無理があるというものです。
つまり 次のような構図になっているのです。
◎社長=自分が考えて次々と行動しないと会社は潰れてしまう。
◎社員=言われた事だけやっていれば、それほど頑張らなくても毎月給料が貰える。
これでは、いくら社長が「もっと会社の事情を考えて仕事をして欲しい」とハッパをかけても、社員には社長の危機感が伝わらないのです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか? その理由の1つは、会社の経営状態について、社長と社員が持っている情報量が圧倒的に違う事です。そのため、どうしても社長と社員の間にはギャップが生じてしまうのです。
社長の頭の中には、会社のビジョンや数字の計画が入っています。どこまで明確に描いているかは人それぞれですが、 ほとんどの人は感覚的にはわかっているはずです。
しかし、そのビジョンや計画をどこまで社員と共有出来ているでしょうか? また、社長自身も、どこまで具体的にビジョンや計画を示すことが出来ているでしょうか?
また、頭の中にあるビジョンや計画を、何らかの具体的な形で紙に描き出すことは出来ていますか? もし、紙に描き出せていないとしたら、それだけ具体的に落とし込めていないという事なのです。
社長の頭の中にある、会社のビジョンや計画、経営の数字を、社員に理解してもらうためには、
まず、社長自身が具体的に、目に見える形でそれをアウトプットする事。そして、誰にでも解り易い方法で社員に伝えることが必要なのです。
2.足を引っ張る「逆ザヤ社員」
さて、あなたは「逆ザヤ」という言葉を知っていますか?
「逆ザヤ」というのは本来、金融関係の言葉なのですが、売り値が買い値より安いというように、値段の開きが本来あるべき状態と反対になることを言います。
売り値が買い値より安くなってしまえば、当然、損をします。会社では、それと同じように、給料を受け取るだけで、全然稼いでくれない、直接的にも間接的にも会社に貢献することのない社員のことを、「逆ザヤ社員」と言います。会社にとって「逆ザヤ社員」は経済的にも職場環境的にもマイナスな存在で、社長の悩みの種としては非常に厄介な問題と言えるでしょう。
会社に貢献しない社員だからといっても、よほどの理由がない限り簡単に解雇出来ないという決まりがあるからです。労働者を守るためにありがたい法律ですが、会社側にとっては「逆ザヤ社員」であっても事件を起こしたり多大な損失を出したりしない限り、解雇することは出来ないのです。
●「逆ザヤ社員」が持っている特徴
基本的に、入社したばかりの新人社員は仕事が出来ませんが、それは「逆ザヤ社員」とは言いません。仕事を覚えて売上や生産性を上げて会社に貢献できるようになるまでは、会社はその社員に「先行投資」をしている状態です。
しかし、何年経っても給料に見合う仕事が出来るようにならない、一人前にならない、という社員は会社にとっての「不良債権」です。それは「逆ザヤ社員」といって差し支えありません。
【こんな社員に要注意!】 ※注意すべき社員を重要度別に3段階でチェックする
重度① 言われた事しかしない社員
このタイプは気が回りません。一つ言われたら一つしか動きません。機転が利かないので、工夫をしようという姿勢も見られません。「言われた事だけをやる」ことが彼の基準です。
重度② 緊張感がなく同じミスを何度も繰り返す
このタイプは失敗から学ぶ事をしません。上司に叱られた時は、身体をこわばらせ、表情は固まり、神妙な顔をしています。しかし頭の中では、「あ~あ、やっちゃったなあ」という後悔の念がグルグル渦巻くだけで、「これからはどうすればこのミスは防げるだろうか?」という対策を考える方向にはまったく働いていないようです。
重度③ 何を話しても反応が鈍く、こちらが疲れてしまう社員
このタイプは、言われた事しかやらず、しかも同じミスを何度も繰り返す上、励ましても注意しても、あまりリアクションがありません。当事者意識がなく、何を話してもどこか他人事のように受け止めているようにも見えます。
あまりにも教育のしがいながいので、上司や社長のほうが疲れてしまい、この社員にまるでエネルギーを吸い取られるような感覚さえ覚えてしまいます。
このように、「逆ザヤ」とまで言わなくても、会社の置かれている状況、自分の置かれている状況を理解できず、はたから見てノホホンとしているように見える社員は、「ノホホン社員」としか言えせん。
●忙しいのは社長だけ。社員が当事者意識を持てない2つの理由
なぜ、彼らはノホホンとしていられるのか? そこには、いくつかの理由が存在します。一言で言えば、「誰かが何とかしてくれるだろう」という他人依存的な発想と、「会社の業績が悪化することで、どんな最悪な事態が待ち構えているのかがイメージできない」という想像力の欠如によるところがあるようです。そもそも、ほとんどの場合、彼らは会社の状況をまったく理解していません。社長が必死で数字の話をしても、さっぱり理解してくれないのです。
その一番の原因は、会社にお金がどう入ってきて、どう使われて、どれだけ残るのか、会社のお金の流れを社員が知らないからです。そのため、いくら社長が売上を上げろ、経費を減らせと話をしても社員にはそこまでの緊張感や当事者意識を持つどころか、中には「そこまで頑張らなくても・・・」と思ってしまうのです。
どうしてこんなことになってしまうのか、3つの根本的な原因をご説明しましよう。
理由① 会社のサイフと自分の生活の危機感が直結していない
(社長)「今、会社がこれだけ大変な状態なのに、なぜ、ウチの社員はノホホンとしていられるのか?」
多くの人は、自分が日頃意識している【サイフ】の範囲内で発想します。また、社長の多くは、会社の【サイフ】で発想し、自分の会社の数字(すなわち売上や利益など)には常に関心を持っています。社長にとって、会社の【サイフ】は自分の生活に直結しているからです。
サラリーマンの多くは、家庭の【サイフ】(すなわち生活費)に意識を向けています。日頃、自分(もしくは配偶者)がやり繰りしているわけですから、生活に直結した数字として、実感を持って理解できます。しかし、それより大きな【サイフ】である「会社の数字」には意識が向きません。実感を持って理解することができないのです。
そのため、いくらニュースで企業の倒産が叫ばれていても、「それはあくまで他人の話。ウチの会社は大丈夫」と心のどこかで無意識のうちに信じてしまうのです。したがって、その人にとって会社の動きは他人事です。その社員は、社長の話がきちんと理解できていません。その話からわかることは、あなたの社員は、「自分の家庭生活と会社の【サイフ】がどうリンクしているのか」というアンテナを持っていないということです。
そのために役立つのが下図に示す「お金の流れの全体図」です。
この図を使うことで、数字のならんだ計画表や試算表などを見なくても、会社のお金の状況がビジュアルで感覚的に理解できるようになります。
※この図は、お金がどのように入ってきて、どのように出て行くのか、そしてどれだけ残るのか、についてお金の流れを解り易く図にしたものです。
「会社全体の数字が、どのような構成や機能をしているのか?」という、 いちばん大切な話を曖昧にして、売上を上げろ、利益を出せと話をしても、社長の期待に反して、社員は勝手な解釈をしています、というか、利益の行き先は「社長家族の生活向上のために必要なのでは…」と、実は経営数字のことは何もわかっていません。
「粗利率は適正にキープできているか?」
「前年と比べて、売上、粗利、利益、最終キャッシュフローはどうか? 」
「競合A社と比べてどうか?」
「目標と比べて、どうか?」
「粗利と人件費のバランスはとれているか?」
こうした質問は、すべて「全体として、お金の流れがどうなっているのか」が、わかっていてはじめて意味を持つのです。
社長と社員それぞれが、お金の流れの全体図を理解できるようになれば、社員とお金の話をする上で勘違いされることはありません。詳しくは次回でお話するので、ここでは読み流す程度でけっこうです。
理由② 夢も希望もない日々
あなたの社員には、夢や目標がありますか?
大げさな事でなくても、「1年後に、海外旅行に行きたい」「3年後には、チームリーダーとして自分の采配で部下を率いて仕事をしたい」 「5年後に貯金を●●万円貯めたい」というような、現実的な夢でもOKです。
要は、「私は、これをやりたい」という欲求があるでしょうか?
多くの人は、この夢を忘れてしまっています。そうすると、今置かれている生活レベルを維持するか、又は少し余裕のある生活をしたい程度の収入が得られることを意識します。
そうすると、「これまで、そこそこの努力をしてきて今があるのだから、これからもこのレベルの努力を続けていけば、まあ、なんとかなるだろう」と楽観的に将来を考えていたりします。これでは、厳し経営環境で生き残ろう、より高い目標に向かって挑戦しよう、という意欲は湧いてきません。
これまで多くの経営者や社員を見てきて思うことですが、夢を持ち続けた人は、自分で事業を起こし、社長になります。そして、自分で会社を興すことはできなくても、社長の描くビジョンや夢に共感した人は、「この人と一緒に働きたい」と考え、その会社の戦力となり、バリバリ働くはずです。
しかし、たいした夢もなく、「ホドホド生活できればいい」という低い基準の欲求とエネルギーしか持っていない人は、ノホホン社員として、そこそこは働きます。
3.「全員参加型経営」で会社が変わる!
こうした現状を打破するために、私がおすすめしているのが「全員参加経営」です。
私は、この「全員参加経営」導入支援のコンサルティングを、主に社員200人以下の中小企業を中心に20年以上行ってきましたが、 これを導入したクライアントには次のような成果がもたらされています。
◎社長が考えている事を1から10まで言わずとも、少し話せば社員に伝わるようになった。
◎営業マンが安易に値引きをしないようになる、社員のムダな動きが減ったことで、効率が上がった。
◎それまで常に指示されないと動かなかった社員が、自分の頭で考えて、主体的に動くようになり、社長の負
担が減った。
◎会社の方針や戦略など、会社が大きく方向転換しなければならない時も、社員の同意が得やすくなり、経営
の舵取りがし易くなった。
◎このままいくと業績はどうなるのか、先の見通しが一目瞭然となり、常に緊張感を持ちながら経営できる環
境になった。
つまり、「全員参加経営」を実行すると、結果的に次の3つのことが実現できるのです。
①お金の悩みから解放される。
②社長自身にとっても、社員にとっても納得のある意思決定ができる。
③会社として大胆なチャレンジがやりやすくなる。
これが実現できたら、 社長としても精神的に随分ラクになると思いませんか? そして、社長自身にとっても、社員にとっても納得感のある意思決定が出来るということは、全員でビジョンに向かっていくために、とても大きな意味があると思います
その結果、「全員参加経営」を導入したクライアントは、売上や利益が必ずアップしています。何も、売上アップを目指して起死回生の奇策を打つわけではありません。取り立てて目新しいことを指導するわけでもありません。
それにもかかわらず、フタをあけてみると、ほとんどの企業において、社長が目指す方向に事業が進み、相応の成長・発展をとげていきます。中には目指す目標の基準が高いが故に、数字の面では決してラクではない企業もありますが、社員に方針・戦略や数字を教えているからこそ、協力的になり、 会社をビジョンの実現に向かって推し進めています。ビジョンに向かって全員がひとつになって動き出せば、自然と会社は成長していくはずです。
経営は、社長の勘と経験と度胸も大事ですが、少子高齢化、人口減少が示すように需要は確実に減っています。競合相手がいる以上は、それなりの対策を立てて経営しない限り、甘い期待は通用ません。だからこそ全社員に経営者意識を持った行動を取ってもらう事が重要な時代と言えます。
「この会社は何年後にどうなるのか」
「そのために今、社員は何をすべきなのか」
「収益を上げるためのお金の出入りはどうなるのか」
今、社長に求められていることは、将来のビジョンを明確に描き、それを実現するために今何をすべきかを、未来から逆算して考える事です。
それが出来る社長と社員は、ビジョンを実現するまでの道筋がハッキリ見えていきます。そして、その道筋を一歩一歩進んでいくための明確なプランを立て、「今やるべきこと」に集中することが出来るのです。
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有限会社リーダーズ愛媛
代表取締役 竹田 富男(たけだ とみお)
HP:https://www.leaders-ehime.com/
Eメール:t2@world.odn.ne.jp
住所:愛媛県松山市清水町4丁目75-1
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